この写真は、福井県の九頭竜川を前にして白山と月を撮影したものです。
撮影場所は、えちぜん鉄道勝山永平寺線の小船戸駅と保田駅の中間付近です。
九頭竜川は手取川と並んで白山から流れ出す大河の一つですが、白山と組み合わせて写真が撮れる場所は意外に少なく、白山の冠雪に月出まで加わると撮影チャンスは稀少です。
写真・文 木村芳文(写真家・当会事務局員)
目次
石徹白探訪 辻村 澄
トラスト日誌9 トラストの恵みをいただきませんか トラスト部会 垣本哲夫
「石徹白探訪」を終えて 文化・地域振興部会座長 加藤正現
白山での事業が植生に及ぼす影響の調査 結果概要 ~特に「人と自然が共生する国立公園重点整備事業」について~ 清水孝彰
山路きて エゾオヤマリンドウ(蝦夷御山竜胆) 山田博子
アメリカNY州の田舎より(2) 出渕瑞穗
環境について考える32 初秋にトラスト地を訪れて ~山田さんとの楽しい自然観察会~ 三津野真澄
事務局短信
でかけてみませんか
事務局より
石徹白探訪
辻村 澄
九頭竜川の支流、石徹白川へ、小石混じりの砂地も見える おだやかな流れを右に見て一路 石徹白へ、まもなく谷幅は狭まり、道路幅も左斜面から木が覆いかぶさって余りあるくらい、気温は8℃(道路に表示)なのに、山は緑、紅葉がまだ追いついて来ていない、あと一月後には景色が一変するだろう。上流に行くに従い、ゴツゴツした岩で河床が覆われ、その間をしぶきとともに水が激しく流れ下っている、所々に河床を安定させるという高い堰堤がいくつも作られている、洪水対策だろうが、岩魚、山女にとってはひどい環境かも。
石徹白に着いて暫くすると、地元の平野さんが説明に来てくださった、年配の人を想像していたのだが意外に若い人なのに驚き,毎年若者が移住してくると聞いてさらに驚いた。
平野さんの案内で中居神社へ、あの世とこの世を結ぶ結界橋を渡ると険しい斜面に 杉の大木に守られ 神社が ”リン” と鎮座している、西暦82年創建とか、側面の荘厳な龍の彫り物が印象に残り、歴史を刻む立派な社の前で、思わず手を合わし無心で祈った。
中居神社から車でさらに上流へ、行き止まりの広場で車を降り、420段位あるという階段をゆっくりと数えながら登りはじめた。間延びした段に来るとホッとする。200段くらいで一休み。息も荒く、心臓がドクドクいっている。ここは標高800m。酸素が薄いんじゃないかなと思ったり、ニュートンは引力を発見したが、自分は”老い”を発見したなんて思いながら、それにしても普段は全く気付かなかった、空気、重力の存在、さらにこの自分を懸命に支えてくれている心臓や肺などなど。いつしか数をかぞえることも忘れ、階段を登り終えると眼前に巨大な杉が悠然と立っている。自分も生きながら途中からミズナラも宿している、あたかも母が子を片手で抱きかかえるように、また大木の周りの人々がアリのようにも見えた。
修験道の先達をはじめ、たくさんの人々が深い祈りをささげ、何を思い、ここを出発し、白山頂上を目指したのだろうか…。大杉を背景に皆さんで記念写真を撮り、駐車場へと下りて昼食にする、遥か山の稜線を見上げ、暖かい日差しと白山おろしの清らかな風の中でいただいた熱いマイタケ味噌汁は格別、自然の中でマイタケにはマイタケの役割があるのだろう、時には人に食べられるけど、お世話くださった方々の真心に感謝。
石徹白に魅せられ移住してきた平野さん、結界橋の向こうの中居神社、420の階段を登っての大杉、マイタケ、真心‥発見がいっぱい。帰り道、ススキの穂が逆光に透けて見えてなんとも美しい、秋がそこまで迫っている石徹白の一日旅でした。
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撮影は、村本さん
とっても素晴らしかった。どこが?って・・集落が古色蒼然で、懐かしい気がした。山登りじゃないのがよかった。深田さんの運転が上手。私ら夫婦では、倍の時間がかかる。(京藤邦子)
川の流れがよかった。奥入瀬まで行かんでもいいくらい。(米山 寛)
楽しかった。渡辺さんの運転に感謝。キノコやオクラミョウガ入りの味噌汁がおいしかった。(室石美智子)
トラスト日誌9 トラストの恵みをいただきませんか
トラスト部会 垣本哲夫
この日誌も9回目となり、トラストの地も3年を迎える事となり、一歩又一歩と計画予定を消化しております。
まず、前号でも言っています様に、間伐作業が、予定より少し遅れましたが、10月2日に始まり、この日は西側の沢沿い斜面と林道下地域の間伐を行いました。次回は10月9日(日)の予定です。
また、将来を見越しての植生の復元ウォッチ区域としての「コードラート」(約5m四方)を数ヵ所設定しました。これら、コードラートを基準に、間伐後のトラスト地域全体の植生を調査していく事になります。
尚、自然環境観察として、最大積雪深計を今年も設置する許可を石川県に提出(10月4日)しました。この観測は、これで3年目となり、3年を通しての実績データでもって当該域の積雪データは貴重なものとなるでしょう。そして、一部土壌調査、一部水質検査も併せて行っており、これらの調査を通してトラスト全体を観ていきたいと考えているところです。
知っての通り、いったん自然と向き合ったなら、その内容の大小を問わず、終わりがなく、どんどん続いていくものです。これらの実績が、会員の皆さんの目に見えてくるのにはまだまだ時間がかかることでしょう。
そこで、このトラストの恵みを頂く事とし、来る11月20日(日)、現地でナメコ汁大会をする事にしました。ご希望の方は、おわん、お箸、300円持参の上、白山比咩神社の高鳥居付近に9時集合です。昼食は各自持参です。参加される方は、垣本(090-9449-6019)まで、申し込んでください。11月15日〆切とします。
「石徹白探訪」を終えて
文化・地域振興部会座長 加藤正現
10月2日(日)、曇天のもと、白山比咩神社に集合した25名(一般の方10名を含む。中能都町からのご夫婦も)は、5台の車に分乗して石徹白をめざした。白山麓を南下し、勝山・大野を経由して、途中「道の駅 九頭竜」で一服。運営委員の垣本氏は、昼食時に提供する味噌汁の具材を調達。休憩後、いよいよ石徹白へ。
出発して3時間、石徹白地区の最も奥の上在所にある白山中居神社に到着。まずは、中居神社の斜向かいにあるコミュニティセンターにて、現地在住の平野彰秀氏によるお話を伺った。石徹白の歴史や文化などを知るにつれて、1000年以上の歴史の重さに触れた気がした。平野氏には白山中居神社に同行して頂き説明をいただいた。
平野氏とは神社前で別れ、石徹白大杉へと向かった。車で約20分、登り口の駐車場に着き、さっそく階段を上る。突然眼前にあらわれた大杉は、堂々とした老木としての風格を備えていた。私は、十数年ぶりの再会である。記念写真の後、駐車場にて昼食タイム。垣本氏と女性陣2名が味噌汁作りにいそしむ中、一足先におにぎりをほおばる。忙しさにかまけて会の行事にはほとんど参加していないが、やはり久々の外での食事は格別だ。出来上がった味噌汁も具沢山でとてもおいしい。感謝!感謝!
たっぷりと休憩の後、再び中居神社に戻り、しばしの自由行動。運営委員の4名は、喫茶店でコーヒーを注文。これがまたすごい。確か注文したのはコーヒーだけのはずだったが、シホォンケーキやみかんまでついて350円。考えられないサービスにびっくりした。他の皆さんは、神社から15分ほどの浄安杉や長走りの滝などを見学されたようだ。帰りは、皆で大師堂に寄り、この日のまとめを行った。
何とか雨も小雨でおさまってくれて大きな支障もなく、今日の会を実施できてほっと一安心。充実した秋の1日であった。なお、来年は刈込池を探訪予定。皆さんのご参加をお待ちしております。
白山での事業が植生に及ぼす影響の調査 結果概要 ~特に「人と自然が共生する国立公園重点整備事業」について~
清水孝彰
1.調査目的
白山の高山帯(標高約2300m以上)、亜高山帯(標高1600~2300m程度)の中で、登山客が最も集中する室堂~南龍ヶ馬場にかけての「南斜面」では、登山客の踏み荒らしによる登山道の荒廃とその補修整備が繰り返されている他、各種施設整備や光ケーブル埋設工事が行われています。
さらに2011年3月には、環境省「人と自然が共生する国立公園重点整備事業」基本計画(以下「重点整備事業」)が、当会も参加する検討委員会を経て策定され、山小屋の改修や、多数の登山道と破損道標の整備がこれから実施に移されていく予定です。しかしながら、標高の高い地域の自然環境ほど、工事や踏み荒らしによる影響を受けやすく、一度破壊された自然環境の復元もより困難です。高山帯を始め自然環境の厳しい場所では、「破損」→「即整備」ではなく、破損の原因と整備した場合の環境への影響を調査し、調査結果を踏まえ、原因を除去・回避する整備手法を検討する必要があります。
当会では、これらの事業の影響が植物にどれだけ出ているのかを定量的に把握するための調査を、2003年より行っています。今年度は「重点整備事業」の調査が必要なことから、夏期2回に分けて調査を実施しました。一方、昨年まで重点的に行ってきた砂防新道の光ケーブル工事に関わる調査は、環境影響が概ね明らかになったことから、今年度から段階的に縮小することとしました。
2.「人と自然が共生する国立公園重点整備事業」基本計画
2011年3月に、白山国立公園主要部における質の高い利用と生態系保全を目的として、この基本計画を環境省が策定しました。過去にも「緑のダイヤモンド計画」など類似の計画はありましたが、今回の計画が従来と異なる点は、当会など登山関係者や地元関係者を公式に含めた検討委員会を経て策定されたことであり、具体的な整備も関係者と協議しながら進めていく点です。当会は、生態系保全の視点から「重点整備事業」の内容に対し意見を述べていくことを、求められている立場にあります。
基本方針として、登山道の整備・管理レベルをA~Cの3段階に分類しています。このうち、「ハイキング程度の装備で安全快適な利用が確保される水準」とされる、レベルAの登山道が、工事の手が最も入ることとなります。レベルAの登山道には、砂防新道、観光新道、エコーライン、南龍道、室堂-山頂間が含まれます。砂防新道は利用者が大変多く、光ケーブルも埋設され、登山道の幅員も広く人工化しています。観光新道やエコーラインのようなお花畑を通過する登山道が、砂防新道と同じような水準に整備されると、生態系への大きな影響が懸念されるため、調査・モニタリングを十分に行っていく必要があります。
スケジュールとしては、山頂お池巡りコース、観光新道と殿ヶ池避難小屋の整備が最も緊急とされています。なお、砂防新道や甚之助避難小屋は、「整備済み」として位置づけられています。
今年度の調査は、「重点整備事業」の整備内容や緊急性を考慮し、以下のような計画で実施しました。
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図1 整備・管理レベルAの登山道
3.調査概要
●調査日及び調査ルート
【第1回】2011年8月6・7日
1日目 別当出合-砂防新道-甚之助-南龍ヶ馬場
2日目 南龍ヶ馬場-エコーライン-室堂-殿ヶ池-観光新道-別当出合
【第2回】2011年8月27・28日
1日目 大白川-平瀬道-室堂
2日目 室堂-山頂お池巡りコース-室堂-殿ヶ池-観光新道-別当出合
●調査者 清水、山本、栗山、垣本、橋本
●調査項目
【過去からの継続項目】
(1)室堂センター前弥陀ヶ原側造成地の植生回復状況検証
(2)砂防新道付替新登山道(標高1780~1880m地点)の登山道幅員の経年変化追跡
(3)南龍道木道設置点の、木道周辺植生の経年変化追跡
【「重点整備事業」関連項目】
(4)甚之助新避難小屋周辺、旧小屋周辺及び下部広場の植生調査
(5)殿ヶ池避難小屋周辺、工事用作業小屋予定地周辺の植生調査
(6)観光新道、山頂お池巡りコース、平瀬道の各登山道及び破損道標の整備予定地における周辺環境調査及びGPS経緯度登録
4.調査結果
今年重点的に調査を行った、「重点整備事業」の調査を報告します。
(1)甚之助避難小屋周辺の植生調査
甚之助新避難小屋は、旧小屋と、旧小屋から100m手前の下部広場のちょうど間に建設され、2010年度に完成しました。元はオオシラビソ-ダケカンバ混交林でしたが、小屋とトイレ浸透層の設置のため大きく造成され、今は草木が全くない裸地が広がっています。
この新小屋完成により、甚之助周辺には、旧小屋、新小屋、下部広場の3箇所の裸地・休憩所ができてしまいました。今後、旧小屋の解体が予定されていますが、同時に裸地の植生復元が課題となります。甚之助は利用者が多いため、旧小屋前にあるベンチは今後も休憩所として利用する考え方もありますが、少なくとも下部広場のベンチは撤去し、植生復元すべきです。この広場周辺は高茎草原(概ね草丈30cm以上の樹木の混じらない草原)となっており、雪崩走路になっている可能性もあることから、裸地の拡大は防ぐ必要があります。
今年度の調査では、植生復元の可能性を検討するため、この3箇所の裸地とその周辺の詳細な植生調査を行いました。
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写真1 甚之助新避難小屋(左上)及び裸地(右上)、旧小屋(左下)、下部広場(右下)
(2)殿ヶ池避難小屋周辺の植生調査
殿ヶ池避難小屋は、老朽化に伴う建替が来年度から実施され、今年度はその設計が環境省により行われています。周囲はハイマツ林、高茎草原、湿地という、一度破壊されたら復元が難しい植生ばかりとなっており、甚之助のような開発できる敷地はほとんどありません。この中に新小屋の他、資材置場、工事用仮設作業小屋、工事中の登山者用仮設小屋をどのように配置するかが検討されています。環境省案では、新小屋を現小屋の隣の平らな敷地、資材置場を現小屋の敷地、工事用仮設作業小屋を現小屋から100m手前の緩やかな敷地、登山者用仮設小屋を現小屋直下の湿地脇の裸地・笹原部分に配置する計画となっています。今年度の調査では、これら開発予定地の詳細な植生調査を行いました。
新小屋予定地の平らな敷地はハイマツ林で、約30種類の植物が確認できました。ハイマツ林は高山を象徴する植生で、本来は保全すべき場所です。工事用仮設作業小屋の予定地は高茎草原を主体としたお花畑で、ここでも約30種類の植物が確認できました。また、雪の流れやすい不安定な場所にできる植生でもあり、標高も併せ考えた時、設備建設により植生が計り知れないダメージを受ける事となるため、当会ではこの場所に作業小屋を設置しないよう申し入れています。
作業小屋は、工事時に必要不可欠な施設であるため、どこかに設置する必要があります。そのため当会では、作業小屋を現小屋直下の湿地脇の裸地・笹原部分に設置することを提案しています。ここは登山者用仮設小屋の設置予定地となっていますが、登山者が工事中の数年間、不便を我慢すればこの仮設小屋は必要ありません。但し便尿や紙の散乱防止のため、携帯トイレスペース程度は設置し、初心者には極力他の登山道に迂回してもらうよう周知することで十分と思います。
なお、新小屋の建設に当たり、通常のトイレは便層スペースが必要なため、開発面積がどうしても広くなります。そのため、新小屋のトイレについても、大倉山避難小屋にあるような携帯トイレ方式とし、開発面積をできる限り小さくするよう提案しています。
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写真2 殿ヶ池避難小屋の建替計画(左)及び現小屋直下の裸地(右)
(3)観光新道の崩落登山道の状況
殿ヶ池避難小屋から100m手前の場所(工事用仮設作業小屋予定地付近)は、登山道が横ずれで荒廃しており、補修する計画となっています。しかしここは高茎草原で斜面雪圧の影響を受ける場所です。通常の補修では雪圧で荒廃部分がさらに横ずれして広がる恐れがあります。手を加えるのは最小限とし、破壊された植生の復元をセットで検討する必要があります。
また、標高1500付近の崩落箇所は、元々沢地形を利用した急傾斜の歩道であり、そこに光ケーブルを埋設したことが崩落の原因と考えられます。この光ケーブルは慶松平まで埋設されていますが、慶松平にはCCTVカメラの土台のみがあり、カメラがありません。崩落の原因である光ケーブルを、使わないなら撤収、使うなら地上部を迂回させるなどして、埋設状態を解消した上で補修する必要があると考えられます。
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写真3 観光新道の崩落登山道(補修予定箇所)の事例
(4)山頂お池巡りコースの破損道標の事例
山頂お池巡りコースには多くの破損道標があり、その整備が計画されています。この中の1つ、紺屋ケ池の脇にある道標は、池に向かって傾斜し、さらに盤がへこんでいます。
この道標に対し、登山道を挟んで反対側は平地になっており、ここはチングルマやアオノツガザクラ等の雪田お花畑となっています。雪田お花畑は、積雪が特に深く吹き溜まる場所に発達します。つまりここは冬期に雪が吹き溜まり、この積雪が池に向かって流下する際の雪圧で、道標がダメージを受けたと想定できます。
現在と同じ位置・形状での道標復旧は、再び同じダメージを受けるだけでなく、地面の杭が傾くことで孔が広がり、土砂流出の原因をつくることにもなります。道標の必要性を再検討し、整備する場合には積雪荷重を受けない位置を選び、形状も考慮したものとすることが必要です。
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写真4 紺屋ケ池脇の傾斜した道標
この他にも、今年度は多くの調査を行いました。調査結果は、「重点整備事業」など白山主要部での整備に関する、環境省や県との交渉・意見交換の中で活用していきたいと思います。
山路きて エゾオヤマリンドウ(蝦夷御山竜胆)
山田博子
8月末、北海道の山々は早くも秋の装いを帯びる。
ロープウエイで一気に高度を稼ぐと、そこはすでに大雪山系の主峰旭岳の一端、姿見の池畔に立つことができる。数千年前に何度も噴火を繰り返して出来たと言われ、ざれた火山礫の稜線を持つ旭岳(2,291m)も、その登山口たる姿見平は、黒々と累積した溶岩を取り囲んで高山植物が群落を形成し、お互いを引き立てて目に美しい。
その原いっぱいに、エゾオヤマリンドウは咲き誇っていた。深い青紫色は夏山シーズンの終焉を告げている。
翌早朝、山麓の温泉宿を出発し、6時間半を要してトムラウシ山頂(2,140m)に立った。眼下に、ゆるやかな高原の広がりと池塘を望むことができ、北沼は融けきらない残雪に半ば埋もれたまま、蒼白く光っていた。
ここで、2009年7月、9名の死者を出したトムラウシ遭難事故が起きた。
夏の短い北海道の山々では営業小屋が無く、避難小屋が主体で、重装備に耐える経験者だけが、縦走を許されるということを、充分認識しなかったツアー会社とガイドの誤った判断で尊い命が失われた。雨と強風の中の登山、低体温症の末の意識混濁と死であった。子育てを終え、仕事からも引退した中高年が、のびやかな自然の中に飛び込んで、自然の雄大さを味わいたいというささやかな楽しみは、無残にも途絶した。
トムラウシの岩峰が空に映え、池塘と花々に囲まれたトムラウシ公園にたどり着いて、再び沢山のエゾオヤマリンドウを見た。あの人々には、この花を味わうことは叶わなかったのだと、痛ましく思いながら。
私たちの白山で、避難小屋と避難小屋を結んで縦走する中高年の一団がいて、15名のうち9名が死亡する遭難事故が起きたとしたら? 私たちは、どんなにか、悔しく、悲しい思いをするか知れない。
この日、12時間余を費やしたトムラウシ山行は終わった。そして、今年の夏山登山もまた終わったのである。
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アメリカNY州の田舎より(2)
出渕瑞穗
再びお邪魔することになりました。皆様、宜しくお願いします。
前回お話ししましたここロングアイランド島面積は3,62k㎡、その内、私が住んでいるサフォーク郡はこの島の東側2,363k㎡、つまりこの島の3分の2を占めています。そして人口は760万人中150万人(2010年国勢調査)なので、約20%です。サフォーク郡の人口密度は632人/k㎡。因みに、石川県で一番近い人口密度の自治体は能美市(578人/k㎡)です。(2011年9月26日現在)
今回は,身近な環境についてお話しします。悲しいお知らせですが,道路にはおびただしいゴミが散乱しています。スーパーマーケットに行く途中の風景です。道路脇はどこもこんな感じです。高速道路もしかりです。
この辺りはそんなに人口密度も大きくないのにこの有様です。実は毎朝私が通っている道はもうちょっと荒んでいます。またそういうところに決まって信号でしばらく止まるので,どうしても目につきます。毎日良い気持ちはせずにこのような道を通っています。
話は変わりますが、今年の8月にカナダの首都オタワ市へビザ更新のために訪れました。数日間滞在し,ここぞとばかり?(アメリカではちょっとした買い物でも車で移動しなければ行けない地域に住んでいます)毎日2万歩ほど歩いて観光を楽しみました。ここは首都といえども人口密度が292人/k㎡と小さいのですが、歩いていてとても気持ちが良いのです。深呼吸したくなるし,ついそこまでとどんどん歩いてみたくなる街でした。そんな約一週間を過ごしてロングアイランドに戻ってから改めて感じたことがあります。
このようにゴミが散乱する風景を毎日見ていると気持ちがささくれ立ってきます。なんかちょっと苛つきやすいし,例えここで自分がポイ捨てしても罪悪感は感じないと思います。何か自分に都合が悪いことは周囲のせいにしやすいんじゃないかとさえ思います。毎日意識せずに視界に入るこの風景は、サブリミナル効果を持ってこの地域に住んでいる人に気がつかないうちに良くない影響を与えている気がします。私はしっかり意識を持って過ごさなければいけない、と自分に言い聞かせています。
一方でガーデニングや日曜大工を趣味とする人がとても多く、私の大家さんご夫妻もまめな方です。この辺りはニューヨーク市に比べると土地があるので、フロントヤードとバックヤードがある家が多く、とても綺麗にされています。夏は芝刈り、秋は落ち葉処理を自分でする方もいますが,業者に依頼する方も大勢います。つまり、私有地は勿論人によりますが,綺麗に手入れされています。また,町に高い税金を支払っているところは、町の行政が美化に気をつけているところもあります。
ということで、下の写真(編集局注12ページ)は私が住んでいる家のバックヤードの一部です。水が綺麗で,ゆっくり流れていてとても気に入っています。もう一つの写真(同)はハイウェイです。下のゴミさえ目に入らなければ,雑木林が続く素敵な風景です。 綺麗な風景がいっぱいあるので,気持ちが良くない風景があっても多くの人は気にしないのかな。
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環境について考える32 初秋にトラスト地を訪れて ~山田さんとの楽しい自然観察会~
三津野真澄
運営委員の山田博子さんから連絡をいただき、私にトラスト地を訪れてほしいとのこと。「ぜひ土壌分析をお願いしたいの」と山田さんの期待は大きい。しかし鉱物分析器も土壌微生物の培養機器も、私の勤務校にはない。「私が行ってもできることはありませんよ」と一応返答する。「でも一度ぜひ見て下さい」山田さんのお誘いの言葉は熱い。その情熱に巻き込まれるようにして、初秋の午後、白峰を訪れることになった。
まずは4.5haの土地全般について説明を受ける(写真1)。山田さんは余程このトラスト地が気に入っているのか、とっても嬉しそうだ。そして土地境界をざっと確認。南西に面し傾斜は穏やかで歩きやすいし、何より林道からすぐ取りつけるのがいい。
一部は約30年以上前に植林された杉の人工林で、利用されないまま放置状態であるらしく、林内部は暗い(写真2)。ここを近日中に森林環境税を利用して間伐の予定である。「スギを育成するための間伐ではなく、ミズナラ林に変えていくことが目的」と山田さんの説明は誇らしげだ。間伐後には地面まで光が届きドングリが芽生えて、自然の回復力でゆっくりと明るい雑木林が蘇っていくんだろうな、と私もしばし想像にふける。
「作業路で上へあがってみましょう」山田さんは颯爽と進んでいく。かなりの健脚だ。必死に追いかける私、汗が噴き出す。作業路が大きく右カーブするところの先には、地形図を見ると谷地形がある。しばし浅い藪漕ぎをすると、まもなく沢を発見。しかも小さいながら湧水である(写真3)。
思わず手ですくって飲んでみる。「冷たくて美味しいですよ~。飲んでみませんか?」山田さんはニコニコしながらも飲まなかった。お腹が繊細とのことだが、実は慎重な性格なのだろう。ペットボトルに採水し、水質分析するため持ち帰る。
再び藪を漕いで作業路に戻ろうとするが見つからない。2人で結構必死に探し回るが道がない‥(冷汗)。『無謀な2人、里山で遭難騒ぎ』と新聞見出しが頭をよぎった時、「あったよ~!よかったぁ!」と山田さんの歓喜の声。やれやれ。
その後は作業路を忠実に山頂まで。途中には立派な炭焼き窯が残り、尾根には堂々とした松。整備がすすめばマツタケもとれるかも?5か所に最大積雪深の調査メジャーや植生調査ポイントが設置されていた。
到着した最高点は標高約800m。現在は藪がうるさいが、少々切り開きをして白山が眺められるようにしたらよいのではと思う。
ここで土壌を掘ってみることになった。地表から深さ15㎝までは有機物層、植物の根が網の目のように絡み合っている(写真4)。その下には赤土。発達した根から見るに「土壌力」はなかなか良好なよう。しかし冒頭に書いたように残念ながら具体的な分析はできないので、サンプル採取に留まる。
この間、私は蚊の襲来を受け身体じゅう刺されまくるが、山田さんには1匹の蚊も寄っていかないのが実に不思議。何やら全身から蚊防御パワーでも出しているような‥。
最高地点の少し下には、道の脇に立派な礫岩が転がっている(写真5)。じっくり観察。おそらく中生代ジュラ紀~白亜紀の手取層群のものというのが私の意見。恐竜の化石が産出する桑島化石壁の泥岩・砂岩、その上位(より新しい)の層と思われるもの、約1億年前の湖底堆積物からできた岩石だ。1億年という長い時間を感じながらうっとり岩石に見入っている私を、山田さんが不思議そうな表情で見つめていた‥。
暗くなったので観察会も終了。どんどん速足で下る山田さんに置いて行かれそうになりながら、つまずきながら、そしてまたもや蚊に刺されながら、何とか車に戻った。山田さん、とっても楽しかったです、ありがとうございました。
後日、湧水の水質分析を行った。結果は以下の通り。
●アンモニウムイオン 0.2ppm未満:(評価、以下同様)きれいな水
●リン酸イオン 0.05ppm未満:きれいな水
●亜硝酸イオン 検出されず:きれいな水
●硝酸イオン 1ppm未満:きれいな水
●COD(化学的酸素要求量)8ppm以上:高い(しかし人為的な汚れによるものではなく、腐葉土など自然の有機物由来と推測される)
●pH 4.8(弱酸性:ただし参考値)*これは本来取水地で測定すべき値。ペットボトルに入れて持ち帰り測定したため、ボトル内の空気に含まれた二酸化炭素が溶け込み、本来の値より小さい値(酸性側)になっていると推測される。
実際に飲用が可能かどうかは、病原菌検査が必要。しかし、私はこの湧水を現地でいっぱい飲んだ(すなわち人体実験)が、お腹には異変は全くなかった。またとっても美味しかった。この病原菌検査、保健所等に依頼できると思う。
トラスト地で間伐作業や自然観察会を行うとき、コンコンと湧き出る水をみんなで一緒に味わえたら素敵だ。また今の少々荒れた杉林から自然林に変遷したら、湧水もさらに豊かになるだろう。楽しみだ。
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写真1 常にエネルギッシュ!運営委員の山田さんが楽しくトラスト地を案内して下さった。
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写真2 約30年以上前に植えられたスギの人工林。手入れされず暗い林である。
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写真3 トラスト地内でみつけた小さな湧水。冷たくて美味しい水だった。
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写真4 山頂で土壌を掘ってみた。厚い腐葉土には植物の根が網のようにからんで伸びていた。
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写真5 見つけた礫岩、たぶん手取層群のもので約1億年前に形成されたもの。
事務局短信
8月5日 運営会議(7名)
8月6,7日 白山調査登山(3名)
8月24日 殿が池避難小屋立替と観光新道一部取り付け歩道開設について現地説明(1名)
8月27,28日 白山調査登山(4名)
9月2日 運営会議(8名)
9月11日 チブリ登山道整備
9月12日 トラスト用地調査(2名)
9月12日 観光新道光ファイバーについて国交省と話合い(2名)
9月12日 事務局会議(4名)
9月26日 労山と殿ヶ池避難小屋について意見交換(労山、当会各4名)
10月2日 文化地域振興部会(25名)
10月9日 トラスト用地間伐視察(2名)
10月23日 チブリ尾根整備事業(7名)
10月23日 クリーン活動(4名)
でかけてみませんか
■11月13日(日) 生物部会 高野山自然観察会
集合:8時 白山比咩神社駐車場
参加費:300円(保険料含む)
■3月11日(日) 第22回総会 午後1時30分 詳細は次号で。
事務局より
殿ヶ池避難小屋の建替えに関し、労山と当会との連名で、携帯トイレとする要望書の提出を考えています。運用等の諸問題がありますが、トイレに関しての一石を投じたいと思います。三津野さんには、8年間の長きにわたって、「環境について考える」シリーズの連載をいただきました。どうもありがとうございました。