三津野真澄
地球温暖化の原因CO2排出量で今や世界一になった中国。環境問題そっちのけで経済発展に突き進むイメージがあります。だが「実情は違う」というのは明日香寿川(あすかじゅせん)東北大学教授、環境エネルギー問題、特に中国の環境問題の専門家です。
新聞に掲載された明日香教授のインタビュー記事、大変興味深かったので一部を抜粋して紹介します。みなさんの中国を見る目が変わるかもしれませんよ。(掲載は2009年7月11日付、朝日新聞)

図1:明日香寿川氏
●中国はCO2排出量で米国を追い越し世界一になりました。温暖化対策はやっているのですか?
「中国は実は温暖化対策に熱心で、世界的に見ても野心的な省エネ目標や自然エネルギー導入目標を掲げています。日本人は知らなさすぎです」
●それは意外です。
「エネルギー効率の悪い工場を次々と強制閉鎖。経済が成長し人口が増加しているのに、国内総生産(GDP)あたりのエネルギー消費量は大幅に低下している。これは他の先進国が高度成長期には無かったことです」
●しかしCO2排出量は増えています。
「中国は巨大な途上国で人口増加中。経済成長を止めるわけには行きません。今も3千万人が無電化地域に住んでいます。それなのに『電気を使うな』と誰が言えますか?」
「今後は自然エネルギーの活用による電力普及です。太陽光発電の設備生産は、いまや世界トップレベルで、風力でも高い目標値を掲げています。太陽熱温水器の生産量、利用量はともに世界一となりました」

図2:中国の民家の屋根に乗る太陽熱温水器
【データ】2007年、中国の太陽熱温水器の生産量は2300万平方メートル、保有量は1億800万平方メートルで世界の76%を占める。
【データ】中国の5ヵ年計画(06~10年)では「GDPあたりのエネルギー消費量20%削減」を掲げている。EUや米国の中期目標よりも大きい。
【データ】 中国の風力発電導入量は世界第4位(12GW)。日本は世界第13位(2GW)で中国の1/6に留まる。
●中国はこれまで削減義務が課せられるのを嫌い、国際会議での交渉を妨害してきたのでは?
「中国の1人あたりの排出量は米国の1/5、日本の半分以下です。しかししばしば国全体の総排出量や増加率をもとに議論が進められています」
「今や中国は世界の工場です。先進国で消費する製品を作るためにCO2排出量が増えていることも忘れてはいけません」
●では12月デンマークで開催されるCOP15でも大きな進展は望めない、と?
「いいえ。温暖化対策に熱心な米国・オバマ政権の誕生で、中国は姿勢を変化。中国だけが悪役になる事態を避けようとするのでしょう」
「温暖化対策が、自国の経済発展やエネルギー安全保障の確立につながることを、そしてそれが国際社会で大きな意味を持つことも、中国政府は認識しています。温暖化対策の技術援助などでメリットが享受できると判断すれば、国際的にも数値目標を掲げると思います」
●では、日本の温暖化対策をどう見ますか?
「日本社会は自覚していませんが、今や国際社会の悪役は、米国や中国ではなく日本です」
「6月に麻生首相が発表した『05年度比15%削減』という中期目標に対して、デブア国連COP事務局長は『自分がこの仕事についた2年半で、初めて言葉を失った』とコメントしました。あまりに低い目標値に『責任を果たさない国』『エネルギー構造改革ができない国』というレッテルを張られました」
「今後の温暖化交渉は、米中2大国が、現在主導しているEUと組んで世界をリードしていくでしょう。日本は自国の責任や改革能力の欠如を棚に上げて中国を批判しても、国際社会では通用しません。もっと現実を見据えた議論がなされるべきです」
みなさん、いかがだったでしょうか。インタビュー記事の読後は中国に対するイメージ変わりませんでしたか。
私は、中国の環境政策の進展に感心すると同時に、環境を切り札に使うしたたかさに舌を巻いたのも事実。今後中国が環境分野でも世界を動かす国になるのは間違いなさそうです。一方の日本、いったいどのようなエネルギー政策があるのかな? 温暖化対策への真剣度は? 私にはちっとも見えてこないのですが‥。

図4:明日香教授が共著で書いている「中国環境ハンドブック09~10年」