三津野 真澄
昨年11月、環境省から2007年度に日本全体から排出された温暖化ガスについて発表がありました。CO2換算で13億7100万トン、前年度比で2.3%増であり過去最大です。このような状況では、京都議定書に定められた「1990年度比でマイナス6%」の達成は非常に難しい‥‥。削減しなければならないのに、増加しているのですから。
「でもCO2の排出量を減らすと言われてもCO2は見えないし、漠然としてイメージしにくいなぁ」と思った人はいませんか?ホントにそのとおり。そこで、今回のテーマは『二酸化炭素の見える化!』です。

(図1:Tescoのカーボンフットプリントの表示)
(1)カーボンフットプリント
まず、最初は「カーボンフットプリント」。これは、商品の製造から輸送、販売、廃棄までの全プロセス(ライフサイクルと呼びます)で排出されるCO2量を算出し表示するものです。フットプリントとは直訳すると「足跡」ですが、その商品が地球に及ぼした影響を足跡と表現したのです。
商品には「CO2排出量○○グラム」と具体的に数値表示されます。“同じ商品を買うなら環境に配慮した商品を選びたい”、という心優しい方にピッタリ!カーボンフットプリントはとても参考になるデータです。
この取り組みは、EU諸国ですでに始まっています。例えば英国、スーパー最大手のテスコTescoがプライベートブランドの商品に表示しています(図1)。ジャガイモ、オレンジジュース、洗剤、電球などで開始され、順次増やしていくそうです。
日本でも経済産業省が中心となって研究会が発足し、検討が進められてきました。そしてサッポロビールが主力商品の「サッポロ生ビール<黒ラベル>」で、1缶と1瓶当たりのCO2排出量を今年から表示すると発表がありました(図2)。

(図2:サッポロ生ビールに今年から表示されるカーボンフットプリント)
同社は「CSRレポート2008」の中で、<黒ラベル大びん(633ml)と350mlアルミ缶について、2003年から2005年にかけてのライフサイクル全体のCO2削減量を評価しています。興味深いので抜粋して一部を紹介しましょう。
まずはライフサイクルのどこでCO2が排出されるか、全プロセスでの量を計算します。

(図3:ビールのライフサイクルでCO2が排出されるプロセス)
サッポロビールはこの各プロセスを徹底的に見直し、削減に取り組んできたそうで、350mlアルミ缶1本あたりのCO2排出量の削減効果は以下の通りです(図4)。

(図4:サッポロ生黒ラベル1缶あたりのCO2削減効果)
缶製品は容器製造段階で排出されるCO2が最も多く、ライフサイクル全体の5割以上を占めていることが分かります。アルミは精錬で大量の電気が必要だからです。現在、従来の206径から2mm縮小した204径に切り替え中で、終了すると缶1本当たりのアルミ使用量が1.9%削減されるそうです。(たった1.9%といえどもトータルでは膨大な量のCO2でしょうね)
一方びんでは、図5のようになります。

(図5:サッポロ生黒ラベル1びんあたりのCO2削減効果)
容器製造でのCO2排出量はぐんと少なく、びんの方が缶よりもライフサイクル全体での排出量も低いそうです。飲むんだったら缶よりびんということですね。
さて、私たち消費者もカーボンフットプリント等を参考に、環境に配慮した商品を選び、環境に取り組む企業を応援していきましょう。
(2)カーボンオフセット
最近、CO2の「排出権取引」という言葉をよく耳にするようになりました。排出量つき旅行パック、カーボンオフセット飲料、そしてオフセット付き雑誌定期購読まで‥‥。(ちなみに朝日新聞社のアエラです。)厳密に言えばカーボンオフセットは直接「二酸化炭素の見える化」とはいえないかもしれませんが、深く関連しますので言及しますね。
さて「カーボンオフセット」とは、どんな意味? 環境省は次のように定義しています。
[1]まずできるだけ排出量が減るよう削減努力を行い、
[2]どうしても排出されるものについて排出量を見積り、
[3]排出量に見合った温室効果ガスの削減活動に投資すること等により、排出される温室効果ガスを埋め合わせること。
一言で言えば、CO2削減の自助努力にも限界がある場合、余裕のある国や企業から二酸化炭素の排出権を購入し、京都議定書の達成を目指すもの。つまり、カーボン(二酸化炭素)オフセット(相殺する)。
* 詳細は環境省京都メカニズム情報コーナーのページへどうぞ
(http://www.env.go.jp/earth/ondanka/mechanism/index.html)
たとえば先のアエラ購読を申し込むと、朝日新聞出版社がブラジルのバイオマス発電所から、1人当たり年間365kgのCO2排出権を購入することになっています。商品の売り上げの一部を相殺費用に充てるのがカーボンオフセット付き商品で、私たち消費者はこれを選んで購入することで、地球温暖化防止に貢献できるという仕組みです。
最近になって急激に増えてきたカーボンオフセット付き商品、そのひとつを紹介しましょう。日本郵政のカーボンオフセット年賀状。1枚につき5円の寄附金が付加されており、葉書表面の下部には、このように書かれています。
「寄付金は、地球温暖化防止を推進するプロジェクトを支援し、京都議定書の日本の温室効果ガス削減目標6%に貢献します。」
日本郵政のHPによると、この年賀状は「クリーン開発メカニズム(Clean Development Mechanism:CDM)」を活用していると説明されています。HPには昨年度のカーボンオフセット年賀状に関するCDM結果報告がされており、
・総額 1億4985万円
・資金提供先 アルゼンチンの風力発電所、韓国の風力発電所、ブラジルの木質バイオマス発電所
・削減されたCO2量 38175トン
来年の年賀状、このカーボンオフセット年賀状はいかがでしょうか。

(図6:カーボンオフセット年賀状)
ところでCO2排出権の取引については市場があり、価格は1トン当たり約3千円で高騰が予想されています。私たちが日常生活で削減に取り組めば、高いお金を払って排出権を購入しなくてもよいということになりますね。まずは削減努力‥‥。
(本文中の図2~5と関連データ出典は「サッポロビールCSRレポート2008」)