三津野 真澄
この原稿を書いているのは8月のお盆過ぎ。連日大変な暑さ続きで、最高気温37度という体温を越える値も記録しました。暑いからエアコンをかける、その排熱のためさらに気温が上がる、という「地球温暖化・負のスパイラル現象」も深刻な昨今です。
今後30年や100年間の上昇温度は研究者により様々な予測値が出されていますが、共通する意見は北極圏での上昇温度が地球全体のそれより遥かに大きいということ。つまり、北極点を中心とした海氷や氷河地帯、その南側のツンドラ地帯、さらに南の森林帯は、温暖化のダメージを激しく受けると考えられます。気候変動に対して非常に脆弱な地域であるのです。
フィンランド北西端に位置し、ノルウェー・スェーデンと接するキルビスヤルビKilvisjarvi村。ここは数多くの山と湖、そして森に恵まれ、特別自然保護区に指定されています。ところがその森が今、危機を迎えています。シラカバ(のような木? 勉強不足でスミマセン)の白い幹のところどころに黒く虫が喰ったような跡が盛り上がり、多くの木が枯れていました(写真1)。地元の人たちは「南からやってきた害虫だ、以前は見たこともなかったのに。温暖化のせいだ」と言います。

(写真1)フィンランド北西部、キルピスヤルビ村では木の枯死が目立つ。
フィンランドは美しい湖が数多くあることでも有名です。フィンランド人が大好きなサウナ、そのほとんどは湖畔に作られており、火照った身体は湖に飛び込んで冷やします。真冬でも湖の氷を割って飛び込むのだそうで、「心臓麻痺を起こさないのですか?」と尋ねてみました。「いやぁ、十年ほど前から氷が薄くなってきて氷結期間もかなり短くなってきたんだよ。これじゃ怖くて湖を渡れないんだ。」 氷結期間の減少は人間ばかりでなく、氷上で生活する動物にとっても脅威となっています。
フィンランドは1990年に世界で最初に炭素税(環境税の一種)を導入した国であり、『2005年環境持続可能性指標』で検証された146カ国中第1位となりました。国土の約6割を森が占める森林資源が豊富な国で、それをバイオマスエネルギーとして活用することに成功。現在、再生可能エネルギー利用では世界のトップをいく国でもあります。
そのフィンランドが国づくりで大切にしている基本姿勢が『コンパクトシティ』の考え方です。駅周辺には商店街を配置し、市街地内での交通手段はトラムや自転車や徒歩というコンパクトな町づくり。車を必要としない、というよりも車が無い方が便利な町を作り守ってきたといいます。
首都のヘルシンキを歩いてみました。石畳の道をトラムが頻繁に通り、安くて便利(写真2)。大勢の市民や観光客が利用していました。ヘルシンキだけではなく、地方都市についても基本姿勢は同じです。街中は賑わい、その周辺には森と湖が豊かに続く国、フィンランド。こうして、車から排出される二酸化炭素を増やさない国づくりに成功しました。

(写真2)首都ヘルシンキの街中を走るトラム(路面電車)。
さて、私たちの日本は、いったいどのような風景を目指しているのでしょうか。
いま、市街地から車で出たとイメージしてください。広い道路の両側には田んぼをつぶして作られた大型ショッピングセンター、全国どこへ行っても同じレストランやチェーン店にコンビニ、田園風景とはそぐわない色合いの大看板と広大な駐車場。一方ではシャッター通りと評される駅前元商店街。
車が無ければ日常生活にも支障をきたし、車を持つことが生きるための必要条件。では高齢者は、障害のある人は、子どもたちは、どうしたらいいのでしょうか?
車から排出されるCO2を大幅に削減しているフィンランドの「コンパクトシティ」の取組み。日本にとっても参考となりそうです。