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●中国の沙漠化問題

2004年10月3日 三津野 真澄

春先になると空が薄黄色く曇り、黒色自動車のボディは薄汚れてしまう。中国北部から偏西風に乗ってやってくる黄砂が犯人です。ボディ上に薄く積もった黄砂を採って顕微鏡でのぞいてみると、砂の他にヒラヒラした薄片状の微細な粘土鉱物も含まれていることが分かります。この黄砂は近年急激に増加の一途、それは北部中国で沙漠化現象が進行中だからです。
はげやま
砂漠化(正しくは沙漠化)とは何でしょうか?「もともとの植生が失われ土壌が劣化する現象でしばしば塩害を伴う」と定義されます。ここでのキーワードは「土壌劣化」。

私の研究フィールドである中国内モンゴル自治区の包頭(パオトウ)市。現在は人口600万を超える大都市ですが、約40年前までは地平線の彼方まで広がる草原で遊牧民が羊を飼いゲル(パオとも呼ばれる移動式家屋)に暮らす地域でした。ところが良質の石炭と鉄鉱石が発見され製鉄業が始まります。大コンビナートが幾つも建設され多数の労働者が中国全土から集められた結果、包頭は大工業都市へと発展していったのです。食糧生産のため草原が開墾され近くを流れる黄河の水を引き化学肥料を大量投入して農業が始まりました。また乾燥気候(年降水量400mm、石川の1/4以下)ながら丘陵地にわずかに残っていた森林も伐採されました。

森林伐採の結果はげ山になってしまった地域。表土が失われてしまったため、植林事業は失敗。(内モンゴル自治区包頭市郊外)

最初は収穫があがった農地でしたが数年のうちに塩害が出始めて農耕ができなくなります。市政府は次々と新たな草原の開墾を命じ、農民たちは塩害農地を放棄していきます。木を失った丘陵地では年に1~2回集中的に降る雨に表土が流されて下流の巨大ダムを埋め尽くしました。草原では草が失われ下の砂や粘土層が剥き出しとなったため、春先には強い風にあおられて何日も砂塵嵐が続くようになりました。1日で砂丘が30mも移動するといったことは稀ではなくなりました。土地を失った農民や遊牧民は仕事を求めて包頭市に出て行きます。現在、包頭市郊外には白く塩が吹き出た広大な荒地と表土を失い岩盤が露出した丘陵地が残るばかりです。
荒野

ポプラが残っていたため移動してきた砂もここでかろうじて止まっている。ポプラ林の右手(写真外)には集落があり砂の来襲から何とか守られている。


私たちの周りには黒くしっとりとした畑、落葉が積もってふかふかした森の土。日本は気候に恵まれ土壌環境は実に豊かです。その一方で世界的には沙漠化に悩む国は多く、日本のように沙漠化問題の見られない国は極めて少数派なのです。「土壌は大気や水と共に環境を形成する大切な要因であり、豊かな土壌があってこそ豊かな植生がある」、中国からの黄砂は私たちにこう教えてくれているように思えます。